世の中には多くのマーケティング論が存在しますが、マーケティングと一言で言ってもプロダクトの性質やターゲットとする業界によって前提条件が大きく変わるため、各企業が行うべき施策はそれぞれ異なります。
しかし、マーケティングの前提となる「顧客理解」は、どのようなビジネスモデルであっても重要であり、マーケターが注力すべきことの一つです。ただ、ここにしっかりと取り組めていないマーケターもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、グロースビジネスグループ マーケティングディビジョン GM(ゼネラルマネージャー)の鈴木さんに、「ベルフェイスへの入社理由」から「顧客の声を継続的に聞くことの重要性」についてまでお話を伺いました。
キャリアのスタートは起業から
ー 最初にこれまでの経歴をお伺いしたいです。
鈴木:
私は21歳の時に起業してからベルフェイスに入社するまで、ずっと自分で事業をやっていました。その中でも、マーケティング支援の歴が一番長いですね。
一番最初はコーチング事業を立ち上げたのですが、21歳の若者にコーチングしてもらいたいと思う人はほぼいないので、オンライン上でブランディングをしつつ集客をしていたんです。
そうしたら、いつの間にかコーチングよりもWeb集客の方が上手くなっていました。
ー マーケティングは独学で勉強されたのでしょうか?
鈴木:
そうですね。当時はアメーバブログなどのブログマーケティングが流行っていたので、手探りでやりつつ知見を溜めていました。
そこで、「どうやってリードを獲得するか」「獲得したリードをいかにナーチャリングするか」の基礎が出来たのかなと感じます。
ー ちなみに、社内では「ドバイさん」と呼ばれていますが由来はどこにあるのでしょうか?
鈴木:
入社直後のミーティングで、過去にドバイに住んでいた話をしたことがきっかけで「ドバイさん」と呼ばれるようになりました。
一度セミリタイアを経験しているのですが、その時にドバイに法人を設立していて、一時期は現地で生活しつつ片手間で事業を立ち上げたりしていました。
セミリタイアからベルフェイスへ
ー セミリタイア生活をやめたのは、何がきっかけだったのでしょうか?
鈴木:
セミリタイア生活をやめようと考えたのは、またビジネスの世界に戻って何かしらの課題解決に関わりたいと思ったからです。
私が本格的なセミリタイアに入った理由には、海外で盗難にあった際に「自分は金銭的な資産に興味がない」と気づき、片手間でやっていた事業もやめて好きなことをやろうと思い立ったことがあります。
当時は、以前から興味があったe-sportsに挑戦したり、チームを作って運営していたりもしました。
ただ、チームの運営をやっているうちに「またビジネスの世界に戻りたいな」と感じるようになり、そこからセミリタイア生活をやめて、新しく何か課題を解決することに取り組むことを決めています。
ー なるほど。その中でも、なぜベルフェイスを選ばれたのでしょうか?
鈴木:
最初はもう一度新たに起業しようかと考えたのですが、起業すると再度リソースを1から作る必要がありますし、既にあるリソースを活用する経験をしたことがなかったこともあり、「一度会社に入ってみよう」と思ったのが始まりです。
そんな時に、とある縁でWeworkさんが主催しているイベントに参加したのですが、6社くらいがプレゼンをしており、そこでベルフェイスを知りました。
CMは見たことがあったので当初は営業イメージが強かったのですが、話を聞きながら印象が変わり、面白そうだったのでそのまま面談を受けたんです。
複数名にお会いしたのですが、特に清水さんの話が印象的でした。他の方とは少し違うかもしれないですが、ビジョンやミッションへの共感というよりも、解決すべき課題の面白さからジョインを決めました。
リード獲得数を3倍以上に改善できた理由
ー 入社されてからは、どのような業務に従事されたのでしょうか?
鈴木:
入社当初はデータ周りの整備やセールスとマーケティングの橋渡し部分、あとは全体の方向性を考えるみたいなことをやっていました。
そこから2ヶ月くらいで、イベントマーケティングチームのマネージャーにアサインされています。
アサインされた後はデータ周りを分析していたのですが、分析から成功のキーとなる要因が見えてきたので、それを実行したら当時3,000件前後のリード獲得から約3.3倍の10,000リードにまで増やすことができました。
ー 凄い成長ですが、何か秘策はあったのでしょうか?
鈴木:
過去の施策を分析した結果から、集客しやすいコンテンツの傾向が見えたので、集客に寄せたコンテンツでウェビナーポートフォリオを形成し、ウェビナーと相性の良いFacebook広告で露出したことが成功のポイントでした。
また、当時月間20回程度のウェビナーを実施していた状況から、月間40回ほど実施できるようにするために業務オペレーションのフローを構築できたことも成果に大きく繋がっています。
ー 今のポジションになったのはいつからなのでしょうか?
鈴木:
2020年の10月にGM代理のポジションになりました。
その後に部署統合などを経て、今の組織体制になったのは今年の1月からで、そのタイミングで正式にマーケティングディビジョンのGMに就任しています。
チーム全員で”顧客理解”に取り組んだ理由と得られた効果
ー GMとして、注力されたことには何がありますか?
鈴木:
最初に意識したのは、チーム作りです。これは過去にコーチング事業をやっていた経験が活かせたと思います。
「マネージャーは部下の経歴書を輝くものにすることが仕事」という信条があったので、それが実現できるように各メンバーと1on1をしながら働いている意義やキャリアの方向性に向き合いました。
その後に、ユニットエコノミクスを最適化していくという澤口さんの方針を踏襲しながら、マーケティングチームとしても方針を調整しながら進めているのが今です。
ー 具体的には、どのような施策を進められているのでしょうか?
鈴木:
これまでの反省として、マーケティングチームは事業計画ドリブンに大量のリード数を追っていたこともあり、適切ではない指標を追い続けるビルドトラップにはまっていました。
なので、チームの方針として、受注期待値の高い適正リードを適正価格で獲得する方向にシフトしています。
ー このような施策を進める背景には何があるのでしょうか?
鈴木:
『bellFace』というプロダクトが一度PMFした状況から、市場の変化によってPMFから外れてしまったことが大きいです。
特に12月までは大規模なキャンペーンもあり影響は少なかったのですが、キャンペーンが終了してからは受注率が悪化し、マーケティングの方針を見直す必要性を強く感じました。
なので、マーケティングの方針を見直すために、チーム全体で顧客について正しく知ることから始めています。
ー 具体的な進め方を知りたいです
鈴木:
「ビザスク」などのサービスを利用してターゲットとなる各業界の営業部長の方とアポイントを取り、インタビューする形で対象者が抱えている課題の構造を可視化していくようなプロセスで進めています。
マーケティングチームのほぼ全員に同席してもらい、全員が同じ目線で課題を認識できるよう機会を作りました。
また、別チームが行っているサクセス顧客のインタビューも全員で視聴しています。
ちなみに、「この動画を見てね」と依頼しても見てもらえない可能性が高いので、それぞれに視聴スケジュールを飛ばすなど、確実に見てもらえるように工夫しましたね。
ー このプロジェクトから得られた効果などはありましたか?
プロジェクトを通して、チーム全員の顧客に対する目線合わせができたこと、課題を認識できたこと、顧客の課題をそれぞれが自分ごととして考えられるようになったことがプロジェクトから得られた利点でした。
加えて、チーム全員の顧客に対する認識が統一されるようになったことは、今後のマーケティングチームの強みになると感じています。
ー これら以外にも、市場調査など積極的に顧客を理解しようとされていますよね
鈴木:
そうですね。私がマーケット情報を網羅的に把握できていなかったこともあり、2020年の12月頃に実施しています。
競合サービスと比較して自社プロダクトはどのようなポジショニングにいるのか、これを可視化することは大事だと思います。
(実際のSTP調査資料より抜粋)
また、具体的にはお話できないのですが、調査結果から「Zoom」や「Teams」のようなPLG(Product-Led Growth)のマーケティングモデルを採用しネットワーク外部性が働いている企業には、認知や顧客獲得効率で絶対に勝てないことがわかったので、プロダクトの転換や戦うべき市場を変えるべきだという示唆を経営陣に共有したりもしました。
いずれにしても、どの企業においても市場調査は多くのインサイトが得られるので、積極的に実施して欲しいなと感じます。
変化する顧客の声に向き合い続ける
ー マーケティングにおいて、一番重視していることは何でしょうか?
鈴木:
これは個人の意見ですが、広義的には「成長市場を見極め、そこで戦うこと」だと考えています。
良い市場に良いタイミングに乗れば力をかけずとも勝手に成長しますし、衰退市場だとどれだけ力をかけても市場自体が衰退してしまい成長するのは難しいので、市場選択が一番重要です。
狭義的な部分であれば、「顧客を知ること」だと思います。
相手のことを事細かに正しく理解できれば、「いつ」「どこで」「どのように行動し」「何を求め」「何に課題を感じ」「何が欲しく」「今どうしたいのか」を把握することが可能です。
そして、この一連の流れを把握できれば、実施すべきマーケティング施策はおのずと導き出されます。
だからこそ、顧客の状態を可視化することがマーケティングプロセスの根幹をなす部分であり、マーケティングにおける成果の9割は顧客のことを正しく知っているかどうかで決まると考えています。
ー SaaSのマーケティングという側面ではどうでしょうか?
鈴木:
扱っている商材やプロダクトの構造、組織の人員次第でマーケティングの方法も変化するので一概には言えませんね。
ただ、プロダクトがSLG(Sales-Led Growth)のモデルかPLGのモデルなのか、ターゲット顧客がエンタープライズ領域かSMB領域かでも手法は変わっていくと思います。
例えば、”The Model”は営業プロセスを分解して各工程毎の数値を可視化することで、工程ごとの生産性を上げるモデルです。
そのため、ある程度の母数がありパターンが見出だせるSMB領域にはフィットしますが、各社ごとに社内外の動きがまったく異なるエンタープライズ領域にそのまま転用するのは難しいです。
実際に、社内でもエンタープライズ領域で80回ほどの商談を経て受注した企業もあり、パターン化することが難しいので適用はしづらいですね。
また、大事なのはどの領域を狙う場合でも、自社がターゲットとしている企業や人を明確にすることがスタートなのではないでしょうか。
これは相手を知ることはもちろん、自社が相手からどう見られているかのポジショニングを把握することまでを含めます。
ターゲットのことも自社のことも競合のことも理解することによって取るべき戦略は明確になるので、その前提を理解する原則は変わらないはずです。
その中でも、「顧客の声に耳を傾け続けること」は重要な原則だと考えており、顧客やユーザーは常に変わり続けるので、”継続的に”耳を傾け続けることが大切なのだと思います。
もちろん施策は変わりますが、「顧客を見る」という原則は変わらないはずです。
ー 鈴木さん、お忙しいところありがとうございました!
<あとがき>
セールステック領域でのイノベーションを目指すベルフェイスに興味がある方は、以下サイトを是非ご覧ください。
※採用サイトはこちら
※エンジニア/プロダクト開発向けサイトはこちら