2022.10.12

スタートアップの”月次決算”って、どう始める?

 ベルフェイスのコーポレートブランディングの一環として始まった、連載企画「コーポレートグループ構築物語」。

 記念すべき第1話をお送りするのは、コーポレートグループ 経営企画ディビジョン ゼネラルマネージャーの田村優介さんです。

 本話では特に、スタートアップにおける「月次決算」について深ぼった内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

 


 

 皆さんはじめまして、コーポレートグループ経営企画ディビジョンゼネラルマネージャーの田村優介と申します!

 私は、ベルフェイスが社員50名 くらいの時に業務委託としてジョインし、月次決算体制を構築しました。その後、社員として2年ほど別部署を経験した後、2022年7月より再び経理を管掌しています。

 この記事では、私の実体験を交えながら、「月次決算」についてスタートアップならではの悩みや、どのように対応してきたかをお伝えできればと思います。

 

月次決算はスタートアップでも必要なのか?

 スタートアップ企業を立ち上げてからグロースするまで、経理の実務では4つのフェーズがあると考えています。4つのフェーズについては、事業内容や業種等により大きく異なってくる可能性がありますので、その点はご留意願えればと思います。

 ※そもそもの月次決算とはこちらを参照ください

 フェーズ1: 創業初期
 フェーズ2: バックオフィス担当社員が入社
 フェーズ3: 利益が出ているのかどうかわからなくなってくる
 フェーズ4: 財務情報に基づいたスピーディな経営判断が必要になる

 

フェーズ1: 創業初期

❏想定規模感:10名 以下
❏経理担当者:創業者

 これは「代表自らが支払や請求業務を管理する!」というフェーズになります。

 支払業務と請求業務以外は税理士にお願いし、利益がでているかどうかは預金通帳の動きを見て判断するという状況かと思います。逆に、正確な月次決算の重要度は低いフェーズです。

 

フェーズ2: バックオフィス担当社員が入社

❏想定規模感:10名 ~30名
❏経理担当者:バックオフィス全般を担当してくれるメンバーが1名

 総務も経理も労務も、バックオフィス全般を一人 で担当してくれる社員が入社するフェーズです。高い専門性というよりは、広く浅くこなせるスキルが求められます。

 経理業務で実際にやっていることはフェーズ1 と同じですが、創業者の手から経理実務が離れます。利益が出ているかどうかは、預金通帳で引き続き判断している事が多いと思います。

 

フェーズ3: 利益が出ているのかどうかわからなくなってくる

❏想定規模感:30名 ~100名
❏経理担当者:経理財務の専門知識を持つ社員が入社

 そろそろ月次決算という概念が生まれだします!(どーん)

 このフェーズになると、支払や入金にも様々な種類が出てきて、預金残高を追いかけるだけでは利益がでているかどうか分からない状態になってくるのではないでしょうか?

 会社の財務状況が分からない状態では、適切な経営判断はできません。

 もちろん、フェーズ2までも財務状況の把握が不要と言っているのではなく、あくまで預金通帳をチェックするだけで何とかなっていたことから、月次作業をしなかったわけです。

 例えば、「財務状況が分からないまま社員数を倍にする」、といった 経営判断が翌月の給料日に何を引き起こすのかは、少しイメージすれば恐怖は伝わるでしょう。。。

 また、大まかな計算で利益が出ていることがわかったとしても、業績が急速に拡大している時期では黒字倒産のリスクも拡大していきます。

 個人的には、このフェーズでしっかりと月次決算の体制を整えるべきと考えおり、 まずは「月の中旬に前月の月次を確認」くらいのペースで作業ができればいいのではないかと思います。

 

フェーズ4: 財務情報に基づいたスピーディな経営判断が必要になる

❏想定規模感:100名 ~
❏経理担当社:2-3名 体制

 6~8営業日での月次作業完了を目指すフェーズです。1人でやっていたことを分担して、早期決算を実現します。

 ちなみに、私がベルフェイスにジョインしたのは、“これからフェーズ3 ”のタイミングなのですが、  急拡大を続けていたこともあり、 半年後にはフェーズ4 の状態が望まれるような状況でした。

 そこで、 月次決算の早期化を念頭におきながら、イチから仕組みづくりを行っていきました。

 

月次決算導入には、どのような知識が必要なのか?

 月次決算をするのに必要なのは、シンプルに考えると以下の5点です。

 ① 預金の入出金明細
 ② 社員の給料に関する情報
 ③ 売上請求の情報
 ④ 支払内容の情報
 ⑤ 保有資産(商品、固定資産)に関する情報

 あとはこれらを会計システムに反映させれば、月次決算は完了です。

 ※簿記の知識というのは、上記①~⑤のデータをどのようの勘定科目で会計システムに反映させるか、を判断するための知識だと思っています

 もちろん、簿記は簿記で必要な知識ですが、もっと必要なスキルがあると考えていて、それは以下の2つです。

 ・そもそも必要な資料を集めること
 ・早期化を実現するために、月次決算で使う情報と会計システムをスムーズに連携させること

 簿記は土台の知識として必要ですが、これらのスキルがないと簿記の知識を十分に活かせません。

 また、これらのスキルを身につけるには、月次作業の全体像を理解することと、他部門とのコミュニケーション能力が必要になってきます。

 「いや、単純に担当者へ聞けばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、残念ながらそんな簡単には物事は進みません。
 ①と②は比較的容易に集まりますが、③、④、⑤の資料がフェーズ3 突入時にキレイに揃っていることはかなりレアケースだと思います。

 

③ 売上請求の情報

 売上金額を確認する基本となる資料は請求書です。

 取引先が少ないうちは、請求書を見ながら1件ずつ会計ソフトに入力をしていくことになるでしょう。

 100件を超えてくると段々と1件ずつの入力が困難になってくるかと思いますので、請求管理システムのデータを出力し、それを会計ソフトに連携させることを考えた方がいいかと思います。

 1枚ずつ入力する場合でも、出力データを連携させる場合でも、注意が必要なのが請求対象期間です。

 サービスにもよると思いますが、1ヶ月分の請求、3ヶ月分の請求、1年分の請求といった具合に請求期間がまちまちであった場合、「請求金額=単月の売上高」という算式は成り立ちません。

 加えて、複数サービスを展開する企業では、それぞれのサービスごとに金額と契約期間の把握が必要です。

 当社の場合の話をすると、当社は『bellFace』という単一プロダクトを提供するSaaS企業であり、売上は「月額の利用料」「初期費用」の2 種類があります。
 また、 販売形態として直接販売、代理店販売があり、 契約期間は 年間契約を原則としています。

 これらの情報を適切に区別し、各月の売上高を計算する必要があります。

 当社でも、情報が整理されていない時期もありましたが、営業部門の担当者とすり合わせを重ね、これらの売上情報を契約期間に応じて適切に按分して請求管理ソフトに入力してもらう体制を構築しています 。

 その結果として、請求管理ソフトから出力したデータを会計ソフトに連携させることで、適切な月次売上高が計上できるようになっており、

 他部署とのコミュニケーション能力が求められると感じます。

 

④ 支払内容の情報

 フェーズ3 突入時点の多くの会社では、支払いのルールが明確でなく、「取引先から請求書が来たらとりあえず管理部門の社員に渡して、後は任せる」という状態の会社も多いのではないでしょうか? 提出の期限も決まっておらず、支払期日の前日に渡すなんてこともざらでしょう。

 月次決算を締めるに際しては使用したすべての費用の請求書がないと正しい処理ができませんので、まずは自社の全社員に対して請求書提出の期限を設け、「月初●営業日の●時までに、請求書の支払申請を行うこと」というルール周知から始まります。

 当社は月初3 営業日が担当者申請期限となり、4 営業日に上長承認で運用しています。※みなさんいつもご協力ありがとうございます!!!

 そして、 これらと並行して支払申請のツールも導入すると作業がスムーズです 。

 多くのフェーズ2 までの会社は、請求書だけをぽんと経理部に渡され、支払処理が行われます 。月次決算をしているわけではないので、内容を細かく確認することもありません。

 それに対して、支払申請のツールを導入してルールを設けて運用すると、実際に費用を使った部署の担当者がどういった内容の支払いなのかを明記してくれる ようになります。

 加えて、すべての請求書に対して1 件ずつ経理担当者が内容をヒアリングしていたらキリがないので、ツールの導入を推奨します。※もちろん初期設定はそれなりの工数を使いますが、得られるものの方が大きいです

 各現場担当者からしてみれば、今までは請求書を経理部に渡すだけでよかったものが、負担増になるので、反発もあるでしょう。そのため、ここで他部門の納得感が醸成できていないと、取引先からの請求書回収に非協力的だったり、届いていても申請し忘れるといった問題が発生します。

 このような事態を回避するためにも、必要性を発信し、粘り強く、担当部門の上長に協力を要請しましょう。

 

⑤ 保有資産(商品、固定資産)に関する情報

 まず商品や 貯蔵品については、シンプルに実地棚卸を実施しましょう!!

 この際に、営業部門や 製造部門、 開発部門など現場で管理している場合もあると思いますが、月次作業の仕組み構築に取り掛かった時点で、まず保有資産の実地棚卸をした方がいいと思います。

 固定資産については、前期決算までは決算書で計上されている固定資産を正として、当期に入ってからの“消耗品で計上されている10万円以上の仕訳”を1 件ずつ遡って確認し、本当に実在するのかを確認しましょう。

 また、PCが1人1台支給される会社がほとんどかと思いますが、管理できていないケースが多いと考えられます。1 度購入して、誰も買い替えが発生していないならいいのですが、Aさんが買い替えて、B さんが使用していたPCが壊れたのでAさんが元々使用していたPCを使い始めて ・・・といったことが往々にしてあります。
 なので、今の従業員規模のうちに、PC管理を徹底しましょう!

 

当社の月次決算のスケジュールやレポートの作成方法

 これでようやく、月次決算を行うためのデータが揃いました!!

 改めて、まだデータが揃っただけで、これから簿記の知識を使って会計システムに反映していく必要があります。PLを固め、売掛金や未払金などといったBS科目の取引先別残高を整理していきます。

 当社では、下記を基本スケジュールとしています。

 6営業日に仮締め
 7営業日にCFOへ報告
 8営業日に本締め&経営陣へ報告

 ちなみにですが、報告のスタイル は、ただ会計データの画像を見せるのではなく、予算との乖離、着地見込みなどを示し、加えて経理が直接的には関係ないものの、サービスの利用状況なども纏めて1つのファイルに落とし込んだスプレッドシートを準備してます。※以下のように、サマリーとテーマ毎の詳細シートに区分けしています。

▼実際のシート例

 また、経営陣への報告の場ではサマリーシートに抜粋した内容を15分ほどかけて私から説明し、その後に質疑応答を受けています。

 この際に気を付けているのが、すべての情報を話そうとはせずに、重要なトピックスを中心に15分程度に収まるように内容を厳選して伝えることです。 加えて、経理財務の専門家でない方にも理解していただきやすいように心がけています。※サマリーシート以外はAppendixとしての立ち位置です。

 月次決算は早ければ早いほどいいですが、限られたリソースとバランスを見ながら、無理のないスケジュールを決めましょう!

 

最後に

 今回のコンテンツでは、月次決算体制の立ち上げから、現在のレポート体制までをざっとお話をさせていただきました。

 最後にまとめますと、

 

月次決算はスタートアップ企業でも必要なのか?

  預金通帳の動きでは利益がでているのか分からなくなってきたら、月次決算は必要だと思います!

  想定イメージとしては、社員が30名を超えてくる頃からでしょうか。

 

月次決算導入にはどのような 知識が必要なのか?

 簿記の知識を土台としつつも、必要な情報に当たりをつけて、収集する能力も重要です。

  さらに、早期化を実現するならシステム連携やエクセル/スプレッドシートの知識が必要となってくると思います。

 

当社の月次決算のスケジュールやレポートの作成方法

 当社では8営業日に経営陣に報告しているものの、リソースに合わせて考えればよい。

 見る側のことを考えて、あれもこれも情報を羅列するのではなく、重要点のサマリーとAppendixの構成がおすすめ。

 

 以上です。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。少しでも 参考になれば幸いです!

 

 

※ベルフェイスでは、現在採用を積極的に行っています。少しでも興味をお持ちの方は、ぜひ以下の情報も参考にしてみてください。

ベルフェイス株式会社

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