ベルフェイスのコーポレートブランディングの一環として始まった、連載企画「ゼロからのバックオフィス構築物語」。
第3話をお送りするのは、コーポレートグループ 法務チーム です。
本話では特に、「契約対応」 について深ぼった内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
こんにちは、ベルフェイスの法務チームです。
今回は、いわゆる一般的な「法務部」についての話の中に、私たちが実際に経験してきた乗り越えた壁、特に契約書の雛形の作成や先方からの修正要望への社内的な対応基準の構築について、お話させていただきたいと思います。
少しでも興味を持っていただけると幸いです。
はじめに
法務部はいつ誕生するのか?
そもそも、法務という「業務」自体は、会社の設立からずっとあるものですが、法務という「部署」 は、得てして、会社の成長とともに、生まれ、育っていくものだと思います。
例えば、会社の規模がまだ小さいときによくあるのが、経理や総務の方で、ちょっと契約書に詳しい方がリーガルチェックをやる、といった具合です。
この頃は、「法務」という業務はあるものの、法務という「部署」はまだ生まれていない状態だと思います。
その後は、業種や会社の方針によっても変わってくるとは思いますが、会社の人数が50名から100名くらいになってくると、そろそろ専任の法務の方が必要になってくるような状況になるのではないでしょうか。
法務という「部署」の誕生です(まだ規模的には「部署」という程ではないかもしれませんが)。
法務部の成長
この頃には、何となくの法務への依頼のフローだったり、何となくの契約書の保管のルールは決まっていることがあると思いますが、まだしっかりとしたものはなく、本当に赤ちゃんの状態だと思います。
そこで、ツールを使って法務への依頼のフローを構築したり、契約書の雛形を作成したり、保管のルールを決めていくことになるかと思います。このように徐々に法務部としての大人の階段を登っていくのです。
契約書の雛形の作成について
使用頻度が多いものから着手する
法務部がある程度育ってくると、よく実施する取引類型や多用する契約書があることに気づいたり、ビジネスサイドから「自社プロダクトやサービスに関する既存の契約書や利用規約に加えて、当社の側からお相手に先だって提示しておきたい事項があるがどうしたらよいか?」といったような要望も増えてきます。このような流れを受けて、契約書の雛形の作成に着手するといったことも少なくないことでしょう。
全く契約書の雛形がない状態から、何らかの契約書の雛形を作ろうと思うと、あれもこれもと思い付き「大変だな!」と思うかもしれません。ですので、そういうときには、一つずつ慌てずに契約書の雛形を作成してくことをお勧めします。
まず着手すべきは、特によく使用する契約書の作成です。業種によっても異なると思いますが、例えばNDAや業務委託契約書などが対象になるかと思います。
いずれにせよ、自社の特色、当該取引を行うにあたって会社として譲れないライン、逆に許容できるリスクなどを考慮して、作成していくことが求められるのではないでしょうか。
自社都合だけに偏ってないか気をつける
また、作成する際にはいくつか注意すべき点がありますが、その中でも、もっともよく陥りがちなところを紹介します。
それは、自社のリスクを最小限にしようと考え過ぎた結果、自社都合だけに振り切った、バランスの悪い契約書の雛形を作成してしまうことです。
そもそも契約書の雛形は、自社のリスクを軽減し、契約締結スピードを向上させるために作成するものです。しかしながら、このバランスの悪い契約書の雛形を作成してしまうと、契約相手との交渉が長引き、ビジネスのスピードを遅くさせてしまうおそれがあります。
もちろん、会社として譲れないラインは守る必要はありますが、それが偏りすぎると問題が生じうるので気をつけましょう。
契約書の雛形を作成したあとについて
適宜、更新を行っていくのが理想的
契約書の雛形を作成したあとは、一度作ったらそのまま作りっぱなしのままにするのではなく、必要に応じて見直しを行い、内容を更新していくのが理想的かと思います。
例えば、あまりに修正依頼が多いところは先方法務とのやりとりをいたずらに増やしてしまうので今一度考え直したり、法改正や時流、ビジネスの形態からくる新たなリスクを軽減するような形にしたり、といったように、その後の運用管理もしっかりやっていくことが欠かせません。そうしなければ、自社のリスクを軽減し、契約締結スピードを向上させるために作成した契約書の雛形が、むしろ逆効果になってしまうおそれがあります。
もっとも、スタートアップ企業においては、様々なリソースが決して潤沢とは言えないので、このような更新などは蔑ろになり、目の前の案件への対応や他のタスクを優先して、雛形の更新は後回しになりがちです。
しかしながら、契約書雛形の作成や更新を後回しにすると、結果的にやんわりと自分たちの首を絞めることになります。
そもそもでいえば、契約書の雛形を作成する趣旨は自社のリスクを軽減し、契約締結スピードを向上させるためであり、更新を適切に行わなければ目の前の案件への対応に要する時間や工数が増え、契約締結スピードが遅くなるわけです。
例えば、毎回同じ箇所の修正は、1件1件の案件では時間的にそれほどかからないものでも、1週間、1ヶ月でのトータル時間はかなりのものになってきます。
更新していく際の心構え
とは言うものの、確かに、雛形の修正となると一気にハードルが高くなり、時間がかかるので、なかなか手を付けにくいというところもあるかと思います。
では、一体何が大変なのか、考えてみましょう。
おそらくですが、「全部見直すのが大変だよな」「修正するっていっても、どういった根拠でやればよいのだろう」「修正要望を受け入れるにあたって社内の承認フローってどうなっていたかな」「社内に周知したりするのが大変だよな」などなど、いくつか思うところがあるのではないでしょうか?
たしかに、全てをきれいに一気にやろうとすると面倒なのは理解できます。ですので、少しずつ紐解いて考えていきましょう。
まずは、見直す量や内容ですが、全てを一気にやる必要はないと思っています。都度、気が付いた段階で対応していけば、それほどのボリュームではないと思いますし、そもそも、一度きれいに作成したものなので、全部やろうとしても案外修正箇所は少ないものです。
そして、悩ましいのが、修正の根拠です。
もちろん、法改正があれば、それに準拠する形となりますので、調査などは大変だと思いますが、答えは分かりやすいと思います。
一方で、先方からの修正要望が多く、それに対していつも妥協案を考えているような場合もあるのではないでしょうか? こういった場合におけるやり方はいくつかあります。
例えば、修正要望の箇所を毎回どこかで管理し、ある程度溜まってきたらどこを修正するか考える、あるいは、何となくのインスピレーション(この修正って多いよなぁ、といった感覚値)を持っておいて気が向いたら修正を考えるなど、色々あると思います。もちろん丁寧なやり方が良いとは思いますが、それでスピード感を失いたくはないと思います。
ですので、余裕があれば、修正要望の箇所を毎回何処かで管理する運用で良いと思いますし、そうでなければ、何となくのインスピレーションで、適宜修正していけば良いと思います。
修正を受け入れる場合の社内フローはどうすべき?
当該修正案を受け入れるにあたっての社内の承認フローについてですが、もし、会社で既に決まっている場合は、それに従えばよいかと思います。
一方で、フローが決まっていない場合は、必要に応じて修正案を受け入れることにより影響を受けるような関係各所に連絡や相談あるいは決裁ができる形でありながら、なるべく迅速な承認フローを構築すべきです。
つまり、全ての修正対応について、必ず管理部長や営業部長、社長に決裁を必要とするようなフローが必須だとは考えていません。
なぜなら、通常、管理部長や営業部長、社長よりも、法務担当者の方が法令や契約書に関して詳しいことがほとんどです。加えて、それほどリスクが大きくない修正対応や過去に実施したものと類似の修正対応であっても再び決済を必須とすると、スピード感や迅速な対応というスタートアップ企業の一番の強みを損ないかねません。
ただ、当然のことではありますが、会社にとってリスクやデメリットの大きい修正対応や、修正により影響を受ける部署が多数にのぼるような対応を行う場合には、社内周知や必要に応じた関係各所への簡単な説明、適切な会議体からの承認の取得をすべきです。
このように、修正による「リスクの大きさ」「関係部署への影響の多さ」などといった観点から、適切な会議体からの決済を必要とする場合を類型化し、各類型に応じた承認フローをいかに迅速に構築することができるか。ここが非常に重要になってくるかなと思います。
インハウスならではのやりがい
また、こういった作業は、法的知見やその他の分野の知見をベースにした上で、社内的な調整や説得を要することでもあり、社外の法律実務家にはできない、インハウスの法務部員の醍醐味、腕の見せ所のひとつなのではないかとも思います。
会社として受け入れられるリスクの範囲や統一感を明確にし、会社として譲れないラインに抵触するような修正対応については必ず経営会議などの社内の適切な会議体の決済を経るフローを構築する。
一方で、単一部署のみの判断で修正対応可能な範囲も明確にすることで、スタートアップ企業の一番の強みである迅速な対応やスピード感をできるだけ維持できるフローを構築する。
これが理想的な状態ではないかなと思います。
以上のように、たしかに、雛形の修正や修正対応フローの構築は大変な場合もありますが、何よりも修正をこまめに行うことが大切です。
やはり溜め込んでしまうと、やるのが億劫になりますし、何より、こまめに修正を行うことによって、自社のリスクを軽減し、契約締結スピードを向上させるという趣旨を全うしやすくなります。
当社の対応について
当社において、契約書の雛形の整理は、かなりしっかりと進めました。よく行う取引類型に対応した契約書雛形や、ビジネスサイドからの要求が多くあった事項を反映させた契約書雛形を作り込み、関係各所に説明をして、社内でわかりやすい場所に保管するようにしています。
具体的には、「定評のある法律実務書にて紹介されている契約書案」や「官公庁が公表しているモデル契約書」などを参考にして雛形作成にあたってのベースとし、自社の特色や譲れないライン、ビジネスサイドからの要望が多かった事項を踏まえて加筆や削除、修正を繰り返しながら契約書雛形を完成させていきました。
また、直近では、個人情報保護法(令和2年改正・令和3年改正)の施行がありましたので、多くの企業がこの改正法への対応を実施されているかと思いますが、多くの例に漏れず当社においても対応を実施しました。その対応の一つとして雛形の修正も行っています。
他にも、契約書雛形の作成に加えて、リーガルチェックにおける当社のリスクの許容できる範囲については、経営会議でしっかりと議論を行った上で決定し、修正などを行う場合のフローもちゃんと確立しました。
フローの確立にあたって経営会議にて議論する際には、フロー案が実際にどのような流れを経るのか視覚的にわかりやすく理解できるようにフロー図を作成したり、契約相手からの修正要望を「リスクの大きさ」や「影響部署の多さ」に応じて類型化し、どの会議体の承認が必要なのかを表としてまとめたものを作成するなど、適切な議論および承認にあたっての意思決定に資するような資料を事前に準備するように工夫しています。
このように、当社においては、契約書の雛形およびリーガルチェックのフローと方向性が定まったため、確認を要する関係者の数の減少や、検討自体の時間的工数の減少に繋がっています。実際に、当社の従前と比較しても、契約書の雛形の修正の速度や契約書審査の速度はかなり早くなりました。
当社の法務チームでは、ビジネスにおいてスピードは大きな財産だと考えています。その財産を獲得すべく、今後もスピード感を緩めることなく業務を行っていければと考えています。
当社には、法務チームに限らず、専門性の高い優秀なメンバーが揃っていると思います。絶賛新しい仲間を募集しておりますので、採用ページもぜひご覧ください!!
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