2022.01.07

CTOとCPO。 2つの顔を持つ取締役が作る 技術/プロダクト戦略の裏側

 

 2020年12月。正式にベルフェイスへジョインしたZIGOROuこと山口(以下、ZIGOROu)。

 ZIGOROuの入社前後で、ベルフェイスは会社としてもプロダクトとしても大きな変化を遂げています。

 そこで、CTO兼CPOとして、技術とプロダクトに関する執行責任を持つZIGOROuがどのように変革を進めていったのか、今回はその裏側について探るインタビューを実施しました。

 

WHO IS ZIGOROu?

 様々な記事や媒体で登場しているZIGOROuですが、ここではベルフェイス社内のZIGOROuを紹介します。

※過去記事
新CTOが考える。ベルフェイスが抱える課題と目指すべき開発組織の姿。

 

・CNOとしてのZIGOROu

 Chief Noodle Officerとして毎日のランチタイムに美味しそうな麵料理を得意気にアップし、飯テロを繰り返してます。

・Slackスタンプ職人としてのZIGOROu

 ベルフェイスにはSlackスタンプ職人が何人かいますが、その中でも屈指の作成数とスピードを誇っています。以下の画像はZIGOROuがスタンプ職人としての職務を全うし、社員とコミュニケーションを深めた貴重なワンシーンです。

 ※フランクな紹介となりましたが、本文は真面目な内容ですので是非読み進めていただけますと幸いです。

 

プロダクト戦略の再構築からスタートしたCPO業務

ーはじめにCTO/CPOとして取り組んだ内容を教えてください。

ZIGOROu

 ベルフェイスの開発組織には様々な課題があったので細々した改善は多くありましたが、最初に着手した大きな改善点はプロダクトビジョンの作成でした。

 ただ、このプロダクトビジョンの作成に関してはPMの大歳さんがnoteできれいにまとめてくれているので、是非そちらを読んでもらえると分かりやすいと思います。

 端的にまとめるとベルフェイスのコーポレートビジョン、ミッションの解釈をPMメンバーですり合わせ、市場に求められている要件を加味した上で、プロダクトとしての最上位の概念を定義したという流れになります。

 具体的には、ビジョン・ミッションにある「勘と根性の営業」とはどんなものなのか、「新しいビジネス機会をもたらす」とはどんな状態なのか、といった部分を細かく話し合いました。

 現状をベースにした解釈を再定義し、わかりやすいプロダクトビジョンを作ることで、プロダクト開発に携わる全ての人が共通認識を持って、目指すべき方向性と目的をぶらすことなく動けるようにしたかったんです。

 

ープロダクトビジョンをまとめる上でどんな思考プロセスがあったでしょうか?

ZIGOROu

 起業当初に作られたコーポレートビジョン・ミッションは、オンライン営業という観点が強い内容になっていますが、プロダクトビジョンを作る上では、もう少し幅広に考える必要があると感じてました。

 これはバズワードっぽいので嫌ですが、営業DXの観点だと、CRMやSFAの普及が進む中でも商談の良し悪しは主観での判断になっているので、この旧来の営業スタイルに対してデータ活用、営業効率化、組織人材育成などに関わるプロダクト開発提供、ソリューションの構築が必要だと考えています。

 また、「売る」という行為は既存事業になるので、顧客にとっての既存事業の改善・改革にフォーカスすることで、顧客のコア事業に関するペインリリーバーとなりたいと考えました。結果として、金銭的または時間的余裕を生み出すことで直接/間接的に新たなビジネス機会を生み出していこうとも考えています。

 この2つを軸にすると、「主観による判断・データ活用できてない商談判断」を改善するために、『bellFace』というテクノロジーを使って「顧客企業にとっての既存事業の改善、改革」にフォーカスするというビジョンに収まったと感じますね。

 商談というフォーカスは変えずに、売りたい人のアウトプットと買いたい人のアウトカムがきちんと交換される世界を実現するプラットフォームにしたいと思います。

 

プロダクトプリンシプルとプラットフォーム戦略

ーなるほど。ではどのようにプロダクトビジョンを実現していくのでしょうか?

ZIGOROu

 ビジョンについて色々と言いましたが、とはいえ現在市場に刺さっているのはオンライン商談の機能です。なので、直近は金融業界などしっかりとした活用イメージのある業界に対する、顧客課題解決につながる機能開発を進めています。

 しかしながら、そこだけにフォーカスし続けてもいずれ頭打ちになることは明白です。なので、オンライン商談に代表される「商談機会の創出」に関するプロダクトカテゴリ以外のタッチポイントを増やしていくことを想定しています。

 また、この点も加味して、タッチポイントを増やす上で方向性がぶれないように、プロダクトビジョンと併せてプロダクトプリンシプルを作成しています。

 

ープロダクトプリンシプルについてもお伺いしたいです!

ZIGOROu

 プロダクトプリンシプルは「より良い商談機会」「より良い商談環境」「より良い商談遂行能力の獲得」という3要素で構成されています。

 「より良い商談機会」は、今までのbellFaceがフォーカスしてきた商談機能をより強化していくという意味で設定していて、セールスプロセスにおけるバリューチェーンに対するアプローチを意味しています。

 ちなみに、セールスプロセスにおけるバリューチェーンとは、マーケティングから始まり、見込み顧客へのアプローチ、商談、クロージング、そしてアップセルやクロスセルを経てロイヤルカスタマーへとつながる一連の流れを意味しています。

 次に、「より良い商談環境」は、セールスデータや管理機能を拡充することで、バリューチェーンにおける顧客接点の質を向上させていきたいと考えています。

 そして、最後の「より良い商談遂行能力の獲得」ですが、使えば使うほど営業活動のパフォーマンスが最大化されるというフレーズを使っています。セールスデータを蓄積することで営業活動を可視化していき、コーチングやナレッジマネジメントといったセールスイネーブルメントの領域を活性化させていきたいと考えています。

 この3つのプロダクトプリンシプルに沿って、今後は開発を実行していきます。

 

ーなるほど。例えば、重要顧客から機能開発要望をもらった場合はどのような対応をするのでしょうか?

ZIGOROu

 うーん、顧客の要望がプロダクトプリンシプルに則ったものかどうかを第一に判断しますね。

 いわゆるウェイター型と呼ばれるようなプロダクト開発はやらないように徹底します。これはなぜかというと、料理でイメージすると分かりやすいのですが、顧客が求めているからといってたこ焼きやお好み焼き、グラタンをひとまとめにした料理では目も当てられないと思うので。笑

 なので、プロダクトも料理と同じで、作り手がゴールイメージをしっかりと持って目的からズレないプロダクトを作る必要があると考えています。

 ただ、プロダクトプリンシプルに則っているだけでは顧客の要望に応えきれないのも事実でなので、実は入社数ヶ月のタイミングからプラットフォーム戦略を打ち出しはじめています。

 この点に関して、現在はプラットフォーム戦略の一環として開発パートナーを見つけ、個社要望についてはパートナーにて対応を進めていただくような基盤を整えているところです。ここはもう少し時間をかける必要がありますが、ベルフェイス本体はSaaS機能の開発に注力しつつ、個社要望に応えていくための道具を揃えていくといったイメージですかね。

 また別視点で見ると、先ほど話したセールスプロセスのバリューチェーンに関わる効率化ツールなどは他にもいくつかあると思います。特にエンタープライズ企業などではこれらのツールを統合して運用したいというニーズも多くあると感じており、プラットフォーム戦略を進めることで、そういったニーズの中に『bellFace』も組み込まれやすくするという狙いもあります。

 

ーありがとうございます。直近強化していく機能があれば教えてください

ZIGOROu

 今後のプロダクト開発については、縦軸をマーケット、横軸をセールスのバリューチェーンと置いて、上にも横にも両軸で拡大していくイメージで進めています。

 その上で、もちろんプラットフォーム戦略に合わせてという前提はありますが、今はゲストにとって使いやすいユースケースに注力して開発を進めていますね。ちなみにベルフェイスでは、「ホスト」は営業する人、「ゲスト」は営業を受ける人という定義です。

 もともと、接続容易性を意識してプロダクトを作りつづけており、「つながるまで」は意識できていたのですが、直近では商談が「つながった後」という観点にまで視野を広げて使いやすさを追求しています。

 少しだけ踏み込んだ話をすると、『bellFace』はゲスト側の手間や抵抗感を少しでも減らすためにブラウザでの接続という点にこだわってきていますが、ブラウザには技術制約的なものがあるため、実現できないことが多くあります。その制約を技術的な工夫で乗り越え、できる限りゲストの情報をホスト側が知れるような機能の開発に注力しています。

要は営業の体験として対面と同じように情報のやり取りができる機能開発を進めているということですね!

 

プロダクトビジョン実現に向けCTOとして技術戦略を整える

ープロダクトビジョン実現に向けて技術戦略をどのように置いていますか?

ZIGOROu:

 大きく分けると「リアルタイムコミュニケーション」「インストールレス/ブラウザ拡張」「QCD」の3点に注力しようと考えています。

 プロダクトとして、対面の代わりになるコミュニケーションを目指しているので、リアルタイムコミュニケーション技術として、WebRTCやWeb Socketなどを使っています。場合によってはSSE (Server-Sent Events)を使うこともあるでしょうね。いわゆる、リアルタイムにストリーミングでデータを流し込むテクノロジー領域を重要視しています。

 加えて、ゲスト側の手間を最小限に抑えるため、インストールレスにこだわりブラウザ上で動くことも重要視しています。メイン技術としてはHTML Living Standardですね。

 またホスト側に『bellFace』をより多く使ってもらうために、画面共有の権限制御や、リモートコントロール機能の提供のためにブラウザ拡張を使っています。

 ブラウザ拡張はメンテナンス面でいえばネイティブアプリに比較すると容易であるという特性や、技術スタックとしてはJavaScriptベースでHTMLやCSSを使うのでWebアプリとほぼ同じという特性を持っています。この特性があるので、インストールレスにこだわりつつ同じ技術スタックを用いてブラウザ拡張を開発することができるという形ですね。

 ベンチャーの戦い方として同じスタックで複数の要望を実現できることは大事なことで、技術戦略的にも色んな能力を持ったエンジニアを採用する必要がなくなりますよね。開発密度を高めるという意味でも重要な戦略になっています。

 あとはエンタープライズ企業の導入も進んでいるので、品質管理も含めたいわゆるQCDの最大化を念頭に置いて戦略設計をしています。

 

ー技術戦略の現場への落とし込みはどのように進めていますか?

ZIGOROu

 EM陣へ常に連携し落とし込んでいるという訳ではないのですが、僕が全社会(社員全員が参加する、経営状況を共有するための会議)などで発信している内容を掴みイメージをしてもらうというフェーズですが、直近だと技術戦略の前にレガシーコードからの脱却やインフラの刷新など社内整備のウェイトが大きいですね。

 また、技術戦略の推進に関してはCTO室のメイン業務だったりするので、室長の北上さんを中心にテックリードの配置を進め、会社としての枠組みを作っていきたいです。

 さらに、人・組織の観点でも技術戦略をどう進めるかを考えられると思います。プロダクト開発組織は「ある程度固定されたプロダクトチーム」「現実にある会社内の組織構造に則った組織」「機能開発を行うPJ型のテンポラリー組織」といった3つの組織で構成されると考えているのですが、ベルフェイスの場合は、比較的プロダクト開発と組織デザインが親和性のある形で設計されているんですね。

 その前提を踏まえると、プロダクトチーム自体もどういった人材を配置すべきかという「ロール」を明確に定義していかなければならないと考えていまして、それぞれのロールを体現できるリード的な人材をピンポイントに採用することで技術戦略の推進をしたいですね!

 

技術戦略実現に必要な要素

ー技術戦略の実現に関して、現状の開発チームの課題を教えてください

ZIGOROu

 課題でいうと大きく3つあります。1つ目は品質管理の部分ですね。品質管理に注力をしたいと考えていますが、組織的に安定させるのが中々進んでいない状態です。

 2つ目は今の組織規模、フェーズだとEMとテックリードの垣根があまりなく、その人員も少ないと感じています。

 僕が入社してから気をつけていることの1つとしてスパン・オブ・コントロールの観点があり、一人のEMに対して5~7名のメンバーがつくというのが適正値だと考えているので、この範囲で落ち着くように技術組織の編成を進めています。しかしながら、現状では一部のチームが大きくなってしまっている実情もあり、EMとテックリードのロールを明確化し、その数自体を増やしていく必要がありますね。

 最後に3つ目はシニアソフトウェアエンジニアのような、コードをどんどん書けるタイプの人を採用しないと戦略実行が進まない点です。SREの観点でもIaCを進めたり、品質管理の観点でもSET人材がいると良いなと感じています。

 もっとも、人の頭数が増えることで技術戦略を実現するというよりは、少数精鋭の開発チームにしていき生産性高くコードを書ける組織にすることで戦略を実現していきたいですね。

 

ーなるほど。プロダクト側の課題もあれば教えてください

ZIGOROu

 技術戦略はとても大事でCTOとして責任を持っていますが、そもそもプロダクト戦略やプロダクトマネジメントがしっかりしていないと技術戦略もへったくれもないんですよね。笑 ここを間違うとビルドトラップに陥りやすくなったりしますし。

 前提の話になりますが、そのために僕がCPOも兼務し社内でOPMWの展開を入社早々にやったり、SaaS企業のプロダクトマネジメントのプロセスを僕自身が学びながら展開を進めたんです。

 その中でプロダクト側の人員を採用することが喫緊の課題となっていますが、どんなロールの人が必要なのかということを深く考えています。

 プロダクトマネージャーが鍵になってくるのですが、プロダクトマネジメントにも種類がいくつかあって「ストラテジー」「テクニカル」「GTM」「エンハンスメント」「グロース」「イノベーション」「プラットフォーム」などに大別ができると思います。なのでフェーズ×目的という分解軸でその都度必要なロールを決めていく必要があるなと考えています。

 その上で、現在必要なロールとしてはプロダクトマネージャーに加えて3つあると感じています。

 GTM業務を共通化してプロダクトの価値をセールス・マーケティングを通して最大化する「Product Marketing Manager」、要望・要求を開発チームに落とし込んでいく「Technical Product Manager」、プロダクトマネージャーと開発やセールス側のブリッジ役となる「Product Ops」の3職種が非常に重要になってくるなと考えています。

 

取締役として見るベルフェイス

ー取締役としてベルフェイスをどう見ているか教えてください

ZIGOROu

 会社としてのフェーズでいうとシリーズDなので、やっていくべきことは明確になってきているなと感じています。笑

 プロダクトとしては、コロナ禍の影響もあり成長は一定鈍化してしまっていたので今は立て直していくというフェーズですね。Product-Led Organizationという言葉もでてきていますが、今後はプロダクト主導で事業と組織の成長を作っていくことにフォーカスしていきます。

 プロダクト主導型の組織を考えていくときに、まずは「何が顧客の求めるものなのかというアウトカムを突き詰めて考える必要があると思っています。また、社内のどの組織に対する組織運営も、プロダクトマネジメント的な観点を入れて進めていくべきだと考えています。

 例えば、中期経営戦略策定なんかもプロダクトマネジメントのスキームに沿って作っています。さらに実際の運用には、プロジェクトマネジメントの概念を強く取り入れ、経営会議などでもタスク管理を行い、1週次・月次・四半期のスプリントみたいな複数の時間軸を設けて話すべきテーマと会議体を設計していたりします。

 こういった組織全体を巻き込んだ大きな変更っていうのは、むしろ苦しい時の方がやりやすいんですよね。伸びてる時って往々にして課題って無視されやすいじゃないですか。笑

 なので、そういった挑戦や変革を作りたい人にとって面白いフェーズにある会社だなと思っています。

 

ー最後に社員について考えていることを教えてください。

ZIGOROu

 採用基準を一定高めに設定しているので、自身で課題を見つけてワークする人が多いなと感じています。直近入社したメンバーも実力を発揮して既に中心人物として活躍していて、実力主義の文化ができつつあるなと思いますね。

 一方で心理的安全性も重要視していて、メンバーが発言しやすい環境や困ったときに相談しやすいコミュニケーションを取るようにしています。

 それによって僕が入社した前後のメンバーが、隔てなく活躍できる土壌になっていると思います。新メンバーだけではなく、昔からベルフェイスを支えてくれているメンバーが直近MVPをとったり、環境が整ったことによりやりたかった業務へ再挑戦できているメンバーがいたりと、組織として良いまとまりができていると思います。

 立ち上げメンバーの一人である吉本さんも、PMから組織開発に異動していましたがプロダクトマネジメントに挑戦したいという思いが再燃し、プロダクト組織に戻ってきてくれました。過去のベルフェイスとはまた環境が違い、学べることも挑戦できることも変わってきている証ではないかと思っています。

 良い意味で変わってきたベルフェイスに、今後も期待していただきたいですし、一緒に働くことに興味がある方は是非応募いただきたいですね!

ーZIGOROuさん、ありがとうございました!

 

この記事のタイトルとURLをコピーするCTOとCPO。 2つの顔を持つ取締役が作る 技術/プロダクト戦略の裏側 https://bs.bell-face.com/2022/01/07/2022010701/
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